1 なまはげが 山から下りてきた

ここは、 秋田県あきたけん男鹿半島おがはんとう これは、 ぼくがくらしている村の お話です。

今日は12月31日、 おおみそかの夜。
遠い昔から 大切に受けつがれてきた なまはげ行事ぎょうじの日です。
ぼくは、 お父に なまはげの話をいっぱい聞いて 育ちました。
なまはげは 年神様としがみさまであること、
悪いことを 教えさとしてくれること、
不幸ふこうをもたらすものを はらいのけてくれること、
そして、 ぼくたちにしあわせをあたえて 帰っていくこと。
でも 本当は、 おそろしい顔であばれまわるなまはげが こわくてたまりません。

ほんのり雪明ゆきあかりの外に おそるおそる出てみます。
雪にすっぽりつつまれた家々。
その小さくなった窓から やさしいあかりが もれています。

寒空さむぞらをつんざき、 ウォー ウォーと おたけびが とどろき始めました。
なまはげが、 たいまつをかた手に 山から下りて来たのです。
ぼくは、 飛んで家に入ります。
ふるえがとまらず、 どきどきそわそわ もう落ち着きません。

うちにも もうすぐやってくる…。

雪明かり

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